真夜 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

 パートAからBに至る
 烏の            熱い羽声
啼く河から          墜ちる空
破れる炎の          厖大な零
 舌どり           曲がる指
昂る星の岐れを        染めあげ
透明な浮標ブイに映す       溶ける軟骨
 淫らな春の         凍りつく瞳
うすい地底に         貼りつく
しなやかな翳を        光茫に
 渡し            夜の格子に
枯れ玉の波          たそがれて
地平線に越える        毒物投与

 百億の首          底なし
 百億の火柱         天果つ

 塞じられる         漆黒の平原
小動物よかばねて         光を吸う
ふかい霧の彼方        鎖・鎖・・
 底びえの          旋律
あつい気流に         点滅の
花の奇怪な命を垂れる     曳舟から
 吊り橋――          疾駆!

 烏の            濃密な風
寂寥な夜翔び         眩暈の河
畑には焦げる砂        隕石割れて
 裂ける眼孔         白濁の時刻
宵星の紫斑が         潜り込め
ふりつけの涸れ渓谷に     我執こめて
 不文律なく         直立する