未刊行詩集『strandにおける魔の……』07: 棘という神話

棘という神話

館は一対の強靱な鋼となって合わさり、融解寸前の痴呆状態を弾頭部に充たし、空隙へ向けてのめりこみ、突き刺さる、神話の、やわらかな、棘。

うすっぺらな透明の膜。繋ぎ目のないつらなり。それぞれに対応する隣接部のうらがえり。暗黒を反射する極端な硬度。擦過可能な膜。鉱物の繊維。動物だけが持つやわらかな細胞、その戦意。異常ななめらかさ。光と光に属さないものをはねかえす表面。薄墨色の燃えつきた足には、船底に付着する赤い虫が貼りついている。吃水線に向かうにしたがい、灰色から群青に、空色に、乾いた白色になって、無色透明の鎖された尖端部分となる。ある種の分泌作用と思われる独特の油脂は、およそ表面という表面を粉飾する死の錆。また、この断層構造は棘本来のもつ浸潤という機能に侵される。そのとき、痛烈に表面を撫でる語は次のものである。インチキの夜。咽喉ぼとけの林。海。なによりも樹海。あの、視線の凍りつく、樹海。

樹木、あるいは樹木に付随する外貌をもつ数種類の植物。その大半は乾燥地帯での火の風、または湿潤地帯における乾燥の兆候として見出すことができる。甲殻類、そして涸渇。針と唇。極小の結晶体。角。光のように丸みを帯びた、角。棘は単独でも棘であるような集合によって、外部に対して外部であるという二重性を内部に対し重合する。

透明な尖端は光にそそのかされて、硬く、軟らかい。その尖は永遠に塞されたままであるが、半永久的に開かれつつある。そのことは、外部の外部に身を委ねつつある尖端が棘の内部に向かっているという逆説を、その尖端が剥がれ開かれていくという表皮そのものに貼りつかせることに似ている。

神話という船は十二本の枠組みで作られている。その内部には通路のない部屋がいくつか用意されている。船の尖端部分には船長室、頭脳と配置。質素な家具、調度品。首狩族のミイラのお守り。丸められた羊皮紙、航海図。掌の中の地球。だが、ここは外側の海、尖った木々の浮かぶ樹海である。そして、永久に夜であるべきやさしい液体。ときおり、熱帯性の乾いた風が、古い砂粒をこの部屋に運ぶ。