連載【第008回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: breath melts 2

 breath melts 2
 私は私の軟らかい部位に温かな吐息を感ずることで、ある種の熱狂を思い起こしていた。それは小波のように跡切れることのない繰り返しの感覚である。これまでにどのくらいの回数の訪れの感覚があったか、またこれからどのくらいの数の訪れを知るのだろうか。今、どのくらいの数の訪れを得ているのだろう。
 私はあなたの内側から私のこの感覚によって受け容れられているに違いないが、はたして私が受け容れているということをあなたは知っているのだろうか。
 横たわるあなたを愛撫したとしても、私があなたに重なったとしても、私の表層が壊れてしまうわけではない。私は逃げられないし、そのことを知っているからここにとどまっている。ただ迷っているということなのかもしれない。それでも私はあなたの内部に囚われている。私が望んだもの、欲望したもの、命じられたもの。あなたは崩れようとしている。切なげな表情と喘ぎとで。
 私はあなたに人間的な親愛を覚えているわけではないし、またあなたがそれを望んでいるはずのないことも充分理解しているはずだ。私はあなたをたしかに包摂しているのだから。

――わたしはあなたの表層と接点を持っているだけで、「あなたとつながっているわけではないのよ」わたしは、その理由について、わたしから言いだすことはありえないのだけれど、たしかに強い理由があるのを知っている。わたしもあなたを愛しているはずがないし、これからも愛するはずのないことも、またあなたを憎むこともありえないはずだもの。わたしはわたしを、あなたと区別する必要があるのよ。わたしはあなたに侵略され、屈服させられ、あなたを埋め込まれているからだわ。これは屈辱であるけれど、おそらくあなたにとってもあなたの汚点、あなたの盲信――。あなたが愛しているのはそのことなのかもしれないのよ。(吐息が溶ける)