連載【第015回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: flat living 2


 flat living 2
 おまえたちは私を呪縛する。しかし、私はその呪縛が私に属しているのか、私を属しているものに関係しているのかを知る術がない。懐かしい匂い、体の奥が引きずられるようないとおしさ、脂にまみれた感触、体をくるむ体毛の記憶、何も考えることのない安逸さ、身をゆだねることの持続――。
 おまえたちは答えない。答えることを退けているのではなく、答える必要のない持続があるばかりだ。私はただおまえたちを通して、呼びさまされる何かを感じている。それが何であるかは別にして。それはそれぞれの内部に根強くあるものではなく、表層のありように起源するものなのかもしれない。なぜなら、つらなる無限の鎖はそれぞれの磁場を形成し、それらの磁力によって影響しあっているはずだからだ。

――腐りかけた足をこうして引きずりながら地を浚い、あるいは地べたを爬虫類のように滑り回るおれたちの姿を、おまえは自分自身の影であるかのように思い違いしているのかもしれない。それはおまえ自身がおまえを見失っているか、忘却しているか、あるいは実はおれたちのことを遠い昔から知りえていたという錯誤に起因しているに違いない。おれたちは起き上がるもののすべての起源に関与している、無窮の平面に沿うものの来るべき未来に関与している。それは汚れた暗い血と得体の知れないものどもの婚礼と交合と裏切りに充ちているからだ。
 権力が婚礼を支配する――、このことを肝に銘じておくべきだ。誕生も、血の相続も、おまえを支配するものへの従属の聖痕を与えられているのだから。呪うべきはこの連綿たる影、影をつなぐ連環、永遠の過去、永遠の未来、永遠の現在を貫くもの。(つづく)