連載【第017回】: 散文詩による小説: Dance Obscura: blood wedding 1

 blood wedding 1
 地面を引きずって徘徊するその意識は、決して地面に引きずられてはいないのだと叫ぶ。だが、天井からは継母の祝福されざる黒い血が滴り、屋根裏部屋の床一面には重力の破産を示す熔解した天体の落下の痕跡が見られる。痕跡は鉱物の形をとるのか、植物の姿となるのか、あるいは生々しい肉そのもの……。すでにこの世を後にした意識は、物質と物質との関係は、意識と物質、意識と意識の関係でもあるのだと言い残していた。その意識が向かったのは、向こうから押し寄せてくるものがとうてい看過することのできない反撥と激突とでもいうべき鋭い亀裂。

 意識Bは逃れること、逸脱することはできない。だが、本当にそうなのか? もちろん、BはB自身をつなぎとめておく。そうすると、BはB自身にとって誰なのか? BはB自身を押し潰そうとしている範囲に囚われているだけで、その一部、あるいは付属しているものではない。たしかにBは奴隷のような存在であることを強いられてはいるが、敵意を失っているわけではない。Bは堪えているに過ぎないのである。――何に?
 私はここで素朴な疑問に直面する。いったい誰が、その薄い皮膜がどちらに属しているのかを知っているのかと――。(つづく)