関東軍衛生幹部教育隊 2
8月9日未明、未だ起床前。突如、けたたましい声が、スピーカーを鳴らした。
「8月9日未明、ソ満国境を越てソ連軍が突然攻撃し来たり。我が軍は直ちに反撃を開始し敵に多大の損害を与えこれを撃退し、我が軍は追撃を敢行しつっあり」
いよいよ来たな。一方的に不可侵条約を破棄して攻撃をして来た露助の赤熊め、目にもの見せてくれん。さあ、出撃だ、モスコー目指して進撃だ。
戦闘出動の準備や兵器の点検をしているところに、本部伝令が来て、「直ちに、本部に来て下さい」と私に耳打ちした。何事だろうと思い巡らしながら、急いで私は伝令兵と共に駈けつけた。
本部に着くと一室に通された、中に教官・叟毛島軍医中尉と関東軍司令部の参謀少尉がいて、関東軍衛生部命令が伝達された。
「これから直ちに牡丹江戦線に急行し、野戦病院の設営準備の偵察をして来ること」
軍裝は軍医少尉の軍服に、軍刀、拳銃、軍医携帯嚢が揃えてある。ただちに着替えて、参謀と待機の自動車に乗り、新京駅に向かった。牡丹江市行きの列車に乗り込み、発車、一路目的地に向かった。
15時、牡丹江市駅に到着し、第五軍軍司令部に行き衛生部部長に面会、命令された任務を報告し指示を仰いだ。
牡丹江方面の戦線は大混乱していた、牡丹江市内には前戦から退却した部隊や敗走兵で収拾がつかない様相を呈し、野戦病院建設どころでない。
今最大の重要課題は、砲兵師団を鉄橋爆破以前に後方に徹退させるため、どのようにしてソ連戦車軍団を阻止せしむるか。
結論は出た、第五軍軍司令官命令。
「我が軍は直ちに夜襲決行、斬り込み隊を5小隊編成する」
第一小隊長に、司令部にいた私が命ぜられた。小隊長以下36名、もちろん各科の下士官、兵の寄せ集めで、階級章で6個班編成して、市の西南の小高い丘陵に攻撃陣地を構えた(壕を掘っただけの陣地)。
(未定稿)
[作成時期]
1989.2.13