【登録 2003/12/26】  
紙田治一 遺稿[ 医療 ]


クランケの呟き

8 お尻の動かないコルセット


 Oクランケ(女性34歳):腰椎椎間板ヘルニアで入院、牽引、コルセット装用、リハビリテーションと治療してきたが、腰痛がなかなか取れない。もちろん歩ける。
 療法士曰く、「貴女はお尻を振って歩くから治らない。今度お尻を動かなくするため、腰から大腿までのコルセットを装用させる」と。
 Oさん(私の長女の同級生だったので、子供の頃から私を知っていた)、私に相談にきた。
「先生、どうしよう。お尻の動かないコルセットをしたら、私、歩けなくなる。主治医の先生に話したけれど、そのほうがよいというの。私、困ったわ」と。
 私は、
「そんなことをしたら、あなたの股関節は運動ができなくなる。だいたい女性のお尻は成熟すれば大きくなって、振るように、骨盤、生殖器の構造上、できているんだよ。マリリン・モンローのお尻の振り方は、その代表的標本なんだよ」
 と話すと、Oさん、
「私、考えてみます」
 と病室に帰った。
 2、3日たって逢ったとき、
「ここにいても駄目だから、退院して家(上砂川の親元)に帰ります」
 と泣いていた。
 退院の日はニコニコして挨拶していたが、本音は怒りや恨みでいっぱいであったろうと……。アルット、ナースよ、クランケは皆が皆、感謝してはいないことを知るべきだ。

(未定稿)

[作成時期]  1989.1.11

(C) Akira Kamita