【登録 2003/12/27】  
紙田治一 遺稿[ 医療 ]


クランケの呟き

11 あわや火事!


 1987年8月第一日曜日のこと。
 夕食後(午後5時30分頃)、病室のクーラーが異常な臭いを発し、同時に変な音を出した。クーラーに目をやると、黒い煙が出ているではないか。慌ててナースコールした。ナースが3階から飛んで来た。煙が焔と変わった。私はまだ自由に動けない。
「消火器を……」と、叫んだ。
 ナースは設置場所を知らない。そこにあるよと教えて取って来させても、操作方法も知らない。私も左手が利かない。あわや火事、すわ大事の瞬間、隣のN君のお父さんが(見舞いに来院していた)飛んで来てくれ、消火器で消してもらった。
 火事の原因のクーラーは春の点検時、電器屋が「これは古くて取り替えなくては駄目だ」と言っていた代物を、そのまま取り替えず使っていたためだ。
 ケチが元兇なり。人命は金より尊し。さらにボヤでなく大火事になったら、病院はペッシャンコとなって潰れるところだったよ。

 火災といえば、病院、ホテル、人のたくさん集まるところは、防火設備に万全を期さなけねばならぬ。従業員には必ず、防火器具の置き場所や取扱方法を熟知させておかねばならない。患者の誘導避難には完全でなければならない。スプリンクラーは絶対設置すること。消防署は管内の査察、監督、指導に万全を尽くすべきである。もちろん経営者、管理者の責任は重大であることはいうまでもない。
 クランケに不便、迷惑、事故に繋がるような設備は、常に点検して修繕、改良する。元来、病院経営とは、普段は無駄と思えるほど、金のかかるものである。

(未定稿)

[作成時期]  1989.1.11

(C) Akira Kamita