クランケの呟き
13 タクランケ!?
病院やアルット、ナースのことばかりを言ったが、クランケにも変な人間が少なくないばかりか、不真面目な者も結構いる。真面目なクランケに対して、不真面目な者を、逆にタクランケ(北海道弁で「ばかもの」)と称しておる。
詐病:交通事故に見せかけた当たり屋。どこも傷害、痛い箇所もないのにやたら痛がる。
アルットに診断書を書いてくれと執拗に迫る。そして全てが大袈裟。他人や特にアルットやナースが見ているところでは、特にそれは激しいものだ。こんなのはたいがい金銭問題が絡んでいる。クランケ同士だと安心して、馬脚を現しているもんだ。アルットを困らせる、いわゆるタクランケの代表である。
退院したくないクランケ:
家のない者(入院してから借家、借間、アパートを引き払ってしまっている)、病院をアパート代わりに居座りを決め込んでいる者。年寄で家族が引き取りたくない者、部屋数の少ない家庭に多い。
生活保護を受けているが、打ち切られたくないか、働きたくない者:
なんとか治療を打ち切られないようにしようとするクランケ、タクランケだ。
忙しいアルットにとっては、タクランケには悩まされる。真面目なクランケには迷惑なタクランケの存在だ。
クランケはたいてい臆病になっている。痛みに対しても過敏である。転んで再入院する、手術をする、そんなクランケも結構いる。それを見たり、聞いたりしているので、余計に慎重になってしまう。こんなクランケには、クランケ同士の経験談や、励まし合いが効果的だ。
いろいろなクランケの中で一番嫌なタクランケとは、威張り、粗暴な者(特に虚勢を張っての空威張り、乱暴、喧嘩や文句の多い者)、二番目は診療に従わぬばかりか不満ばっかり言っている者、三番目は入院中なのに飲酒、酩酊し、他のクランケやナースに絡む者、さらに何回注意しても繰り返す者、その他、薬を出しても呑まず、隠し、溜めている者、薬効を調べて他人にくれてやるか、ひどいのは適当な値段で売っている者。こんな者はタクランケというだけでは済まない、病気を装った詐欺である。
多くのクランケの中には、変なのもいる。自分をよく看て欲しくて、他のクランケの悪口や告げ口をして、自分は結構出鱈目をやっている。アルットやナースに告げ口をしたってさっぱり聞き入れてくないのに。
(未定稿)
[作成時期]
1989.1.11