【登録 2003/12/28】  
紙田治一 遺稿[ 医療 ]


クランケの呟き

14 病の中にのめり込む


 複数のアルットがいて1人のクランケを診療をする(大学病院等の場合)。それぞれ勝手なことを言って、クランケが迷うようなことがある。縦、横の連携をしっかり取って欲しいものだ。
 私の場合は、手術後の食事が、無残渣食と粥食を行ったり来たり、アルットによって変わるので、面喰らったものだ。複数のアルットからの食事指示箋が出されての珍事である。食事がそうであれば、当然治療も一貫性があるのかな?

 クランケの中には、自分が重症だと思い込んでいる者が結構いる。アルットやナースに大切に取り扱って欲しい。痛い、痛いと言って、眠れない。眠れないと言って薬を要求する。食事が美味くなければ、食べられないと訴える、胃腸が悪いと言う。点滴注射をしてもらうと喜んでいる。廃用症候群になることも考えずに、病の中にのめり込んでいる。こんなクランケは見ていても、歯痒くなる。
 他のクランケを平気で使おうとする、クランケ仲間の爪弾き者。その名はタクランケなり。
 好むと好まざるとを問わず、入院のお好きな方がいます。退院が明日と言われて、入浴をするんだと、それも自分が行きなれた銭湯に行くんだと、奥さんに自転車を持って来させて、乗って行ったはいいが、帰りに転倒して、大腿骨折、入院延長3ヶ月とは。奥さんの怒ること、プンプンしていた。

 Wお婆あさんの話。退院して2週間目、あんなに元気で行ったのに、今度は患者車に乗せられて再入院。1週間はベッドに寝たっきり、凄い重傷かと思っていたら、起きるようになって聞いたら、「箪笥でゴン」だった。家族の留守中、着物を虫干ししていて、取り入れ箪笥の中に納めるとき、着物を入れたまま引き出しを持ち挙げて納めようとして、重さに耐えられずヨロヨロと倒れて、箪笥の角でゴーンと脇っ腹を打撲。嫁さん、帰って来てビックリ、慌てて急救車を呼んで入院のお粗末。骨折も内臓損傷もなし。ただ恥ずかしいので、階段にて転んだと言った手前、1週間は静かに寝ていた、と。本当に「箪笥にゴン」で再入院、3週間で無事退院、めでたしめでたし、一件落着。その後は元気の由。

(未定稿)

[作成時期]  1989.1.11

(C) Akira Kamita