【登録 2003/12/29】  
紙田治一 遺稿[ 医療 ]


クランケの呟き

17 医療事故の責任


 S市立病院に入院したときの私は、挫創部位の関係から外科より泌尿器科に検査のために廻されたのが、レントゲン検査の結果、泌尿器に異常がなく、化膿の原因の確定診断もなしに手術をされて、後にわかった原因の左恥骨の亀裂骨折を見逃され、化膿菌が発見されずに症状が進行すると、糖尿病のために化膿が進行するのだと、何ら治療法も持たず、ただ漫然と切開を繰り返されていた。
 軽症糖尿病は化膿によって血糖が増加したことを知らぬ。
 糖尿病の血糖は化膿が治癒すると共に減少して、インシュリンの注射や内服薬で低血糖になった。現在は弱い抗血糖剤を毎朝1錠だけ服用しているが、血糖値は120〜130mg/dlである。
 この数値を見ても、糖尿病が原因ではなく、見逃した左恥骨の亀裂が骨髄炎となって、右恥骨の骨膜炎を合併したことは明白であろう。
 もし整形外科にレントゲンの撮影写真を見てもらえば、亀裂骨折を発見できていたはずである。化膿の原因である細菌検査も繰り返し検査していただろう。そうすれば早期に恥骨の掻爬手術をして、簡単に全快していたと思われる。
 糖尿病を診察した内科医も無責任であり不勉強であった。化膿菌がたった1回の検査で発見されないとて、化膿が糖尿病のせいであろうと泌尿器科の医師に伝えて、内科の治療もしない医学の不勉強と無責任が、骨髄炎の見逃しをして、とんでもない悲惨な結果に陥れた。
 これはS市立病院の各科の横の連携の悪い現れであり、患者を疾病別に診る欠陥である。

 本来、人間は疾患別に分解して診るべきものではなく、総合的な全体像を診て各科共同で治療に当たるべきではなかったのか。簡単なものが治療できず、おまけに悪化させる。これは診療契約(診療を開始したときから誤診や医療事故を起こさず治癒させる)の違反である。
 該当する医師の責任はもちろんだが、管理責任者の院長にも重大な責任がある。また開設者たるS市市長に償うべき責任があるのは当然であろう。
 N市立病院や国立N病院における医療事故は誤診、ミス、無責任から起こる。その大小を問わず、診療契約違反に対しては、起こした本人はもちろん、各部署の責任者の負うべきことも当然だが、開設者の地方自治体、国家に重大な責任がある。
 本来、医療は傷病に倒れた者を治して、完全に社会復帰をせしむるものである。その中に不備の点があれば、速やかに医療制度の欠陥を改善しなくてはならない。
 この欠陥医療制度を改善しない国や、それを放置している、国民から負託を受けた各級議員の政治家にもその責めの一端がある。
 早く国民が安心して診療を受けられるように、よい医療制度をつくるために、全国民が医療関係者、行政、国家機関、政治家に強く働きかけようではないか。

(未定稿)

[作成時期]  1989.1.11

(C) Akira Kamita