ストーマ(人工肛門、糞便排出口とは?)
自然の肛門に対して、手術によって、つまり意識的、人工的に造った便の開口部を人工肛門と称している。英米ではコロストミーcolostomy(colon結腸+ostomy出口造設術)とイレオストミーileostmy(ileum回腸+ostomy出口造設術)とに分類し、呼称している。
人工肛門は、人工腎や人工心肺のような人工材料で造った代用物、という意味ではない(人工材料で造った本当の、人工肛門も近き将来には必ず出来ると考える)。記録上から、18世紀の初めにフランスのリットレ(M.Littre)氏が初めて人工肛門を造ったことになっている。それから由来して、左下腹部に人工肛門を造る手術をリットレ手術と称する。
ストーマは腹壁皮膚から約0.5−3.0cm突出しているのが普通で、この類円形(直径2−5cm)のピンク色の柔らかい組織(粘膜)には痛覚や触覚はない。硬い大きさによってストーマの引き伸ばされるのを感じた経験がある。ストーマとは便の出る場所が変わって、自分の意志と関係なく便が出て来る。排便に関しては、まるで未経験、新生児(赤ん坊)と同じで、新たにトイレット・トレーニンクをしなければならぬ。
ストーマの位置と腸管の部位
ストーマ(人工肛門)として開口される、腸管部位によって、次のように分類される。また、それに相当する腹壁の位置に、開口させることが多い。
1.回腸肛門(イレオストミー):回腸を人工肛門にするもので、通常、右下腹部に出ている。
2.盲腸瘻(シコストミー):右下腹部に出ている。
3.横行結腸肛門(トランスパソストミー):通常、右上腹部に造るが、真中(臍の上)や左上腹部に造ることもある。
4.下行結腸肛門(ディセンディンゴストミー):左中腹部に出すことが多い。
5.S状結腸肛門(シグモイドストミー):左下腹部か真中(臍または臍下)寄りに造られる。まれには、側腹部や肛門または尾骨部に造られることもある。
6.その他:S状結腸、直腸移行部を仙骨部に持って来て、肛門にすることがある。また、従来の自然肛門の位置へ、腸管を引き貫いて(プルスルー)、結腸や小腸をあたかも自然肛門であるかのように造設することがある。
回腸−右側結腸で開口したストーマは非吸収便または液便−軟便を排出する湿肛門(ウェット・ストーマ)である。
それに対して、左側結腸で開口したストーマは貯蔵便または軟塊便−硬便を排出する乾肛門(ドライ・ストーマ)といえる。