【登録 2003/08/05】  
紙田治一 遺稿[ ある医師のストーマ闘病記 ]


ストーマについて 4


ストーマの粘膜


 ストーマにする腸管の断端を、どのような型にするかによって、三つに分けられる。


 次に、ストーマの粘膜の性状について述べておく。
 色は赤味を帯びたピンクが正常である。茶色になったり、黒ずんで来たり、灰白色になったりするのは、局所の動脈血管に障害があることを意味しており、壊死に陥ることもある。全体的に色が薄く血の気がない(透明な白っぽさがある)のは貧血状態であることを示している。したがって、貧血の治療を受ければ正常の色に戻る。粘膜は腫れたり、縮んだり、変動しているのが正常であるが、腫れっぱなしは鬱血や炎症があることを意味し、縮みっぱなしで水気のないのは脱水状態であることを示している。
 粘膜面は透明ないし、やや白色を帯びた粘液で濡れているのが正常で、乾燥しているのは異常である。また擦るとわずかに血が滲んで来るのは正常で、無害であるが、多量の出血があるのは異常である。
 粘膜は温かいのが普通で、手に触れて冷たく感じたり熱く感じるのは異常である。


ストーマの働きについて述べる


 新しくストーマを設けた時から、糞詰まりは解決し、ガスが溜ることもないし、便を出したくても出て来ないという、苦しい思いをしなくても済むようになる。また疼痛や不快感も解消して、腸の働きも正常になってよく消化し、体力もついて来る(理想的なストーマの場合)。
 ところで、ストーマは自然の肛門と違って、便が出るのを止める筋肉(括約筋)も弁もない。また自分の意志通りに排便することも出来ないし、人前でガスが出るのを堪え、人のいないところでガスを出すということも出来ない。それだけに意志の入らない自然な(赤ん坊のような)排便状態になるので、胃腸の働きが正常となる。
 ただ、便を溜める働きのある直腸がないこと、括約筋の調節作用を持った自然肛門がなくなって、新しい代用品を持っていることが、普通の人と異なる。
1.右下腹部にストーマがある場合
 大腸の全て、または大部分が切除されてしまっているものが多い。または、小腸あるいは小腸に近い大腸にストーマが造られている。したがって、便を貯えたり、また水分や電解質を吸収するところが、普通の人より少なくなっているので、大便は非常に軟らかいのが普通であり、しかも一日中絶えず少量ずつの排便がある。液状便が大量に排出されると、それだけ体内の水分や電解質が不足するBSもある。ここからの排便内容物には小腸の消化酵素が残っていることが多く、そのためにこの便が皮膚につくと皮膚炎を起こしてカブれることがある。したがって、常に器具を皮膚に密着させておくことが肝腎で、かつ器具の穴が大き過ぎてストーマとの間に皮膚が露出する物も好ましくない。
2.左下腹部にストーマがある場合
 大部分の大腸が残っているので、腸内容物の水分は吸収されて、便は硬さを持つようになる。ある程度便を貯えることも出来るし、定期的に排便があるように調整することも出来る。しかし、意志通りの排便にはならない。大便の刺激によって周囲皮膚炎が起きることも、右下腹部ストーマに比べると稀である。食事内容とか食事時間等で排便が調整出来るようになると、器具を着けなくても良いようになるが、不慣れな間は着けておいた方が無難であり、心身ともに安心していられる。
3.仙骨部や会陰部にストーマがある場合
 腸管のどの部分が、ストーマになっているかによって、排泄内容が異なる。例えば、小腸や右側結腸がストーマになっている場合は、水様便乃至軟便であるが、結腸の場合は、軟−普通−硬便の排出を見るのが普通である。いずれにしても、その部に着ける適当なストーマ装具は未開発であるし、もし着けても、自分の目に届かないところにあるので処理しにくい。
4.臍部にストーマがある場合
 前項と同様のことがいえる。しかし、前項と違って、処理をするには最も便利な位置にあるので、このように身体の中心線上にあるストーマは、老人や肥満体の人や目の不自由な人にとっては、極めて容易に排便処理が出来るものといえる。しかし、開創やヘルニアを起こしやすいという欠点があるほかに、ベルトや帯を締めるのに不便である。

(未定稿)

[作成時期]  1988

(C) Akira Kamita