食事態度について
摂取物が能率的に体内に養分として取られ、老廃物は速やかに排泄されるような食べ方をすることが望ましい。
1)まず口にする前に、食物の形、色合いを見たり、香りや硬さに触れて、消化液の出る余裕を与えること。
2)良く噛んで、その物の味を十分味わってから飲み込むこと。それには一口50−100回噛むこと。飲物は舌でよく味わうこと。よく味わい、よく噛んでいるうちに胃腸液が適度に分泌されて、自然な消化運動が行なわれるようになる。またよく噛まないで食べた物は不消化物となって、小さい人工肛門の口を塞ぐ結果となったり、激ししい腹痛を起こすことになりかねない。
3)暴飲暴食をしないこと。また、空っ腹を堪えるのも良くない。消化液分泌と消化運動の一日のリズムが壊れることは、特に老人にとっては好ましくない。
4)食事時間が極端に不規則にならないように気をつけること。
5)楽しい快い気持で食べること。ただし、テレビを見ながらとか、本や新聞を読みながらとか、食事以外のことに気を取られるのは好ましくない。特に、憂い、悲しみ、怒り、急ぎ、喜び過ぎる心は、消化液の分泌や胃腸運動を異常にするから、気をつけること。
6)感謝の念で食べること。毎日適度の全身運動をすること。肥え過ぎや皮下脂肪沈着を防ぐこと。たたし、食後すぐの激しい運動とか、労働は慎んだほうが良い。
以上はいずれも、胃腸の神経や、血管を適度に働かせ消化液の分泌を促進し、胃腸運動を自然な姿で行なうことになる。
排便
通常のS状結腸人工肛門の場合、自然肛門と同じように排便するのが普通であって、ストーマのために便秘になったり、下痢になったりすることはあってはならない。もしそうだとしたら、それは異常であるから、医学的な検査と治療を要する。
もっとも、ストーマは、自然肛門のように自分の意志で排便したり止めたりすることは出来ない。これは肛門括約筋という、肛門を開けたり閉じたりする、輪状筋がないからである。このことは社会生活に支障を来たす重要な点である。
反面、自然肛門のように大便を我慢することの出来ないストーマは、むしろ自然生活の中では、好ましいことと考えるべきか?……
1)ストーマ装具を着けて、排泄物がパックに入るようにしておく。便が溜まった時、そのパックを取ってそのまま捨てるなり、可能なら内容物だけを捨ててパックを洗って再生使用する。
2)毎日1回浣腸をして腸内容物を洗い流してしまう。
3)排便訓練によって、食事調整や腹圧法によって定時的に独自の排便法を編み出す。
4)必要やむをえない場合は、示指をストーマ内に出し入れして排便する(医師の指示に従うこと)。
薬、煙草、酒
1)薬
ストーマのあることを知っている医師の処方箋に基づいて、調剤され、服用している薬には問題はない。ただし、半年以上も医師の診察を受けずに、薬だけ取りに来るのは好ましくない。時には医師の診察を受けて、より効果のある薬を処方して貰ったほうが良い。また、鎮痛剤や鎮静剤などを連用していると、腸の蠕動運動を抑え、便秘を起こすことがある。体力増強剤(ホルモン、ビタミン、ミネラル)も連用には注意したほうが良い。
2)煙草、酒
煙草や酒は腸の血行障害を起こしたり、胃腸粘膜を刺激したりするので好ましくないが、少量ならそれほど影響ない。