【登録 2003/08/30】  
紙田治一 遺稿[ ある医師のストーマ闘病記 ]


私の病歴 6


○ストーマは安易に造設すべきものではないが、もし造設したならば、クランケの身になって指導し、ストーマ・リハビリテーション、互助組織を調べて紹介すべきである。ストーマ装具もいろいろあるので、教える必要がある。
 今後の課題として、コンピューター、超伝導子などの研究によって人工心臓、人工腎臓のように本当の意味の人工肛門が開発されんことに期待する。また、食事(栄養)・消化吸収問題も一日も早い研究の成功が待たれる。

○糞石は水分が欠乏したもので、決して石や木や金属になったわけではない。飲水、注腸(微温湯)の反復施行によって、硬便は軟便、下痢水様便になって、排便される。

○ストーマは正しい方法で造ること、少しの誤り、技術の未熟さから来る失敗も、許されぬ。それがクランケをどれだけ困らせ、悩ますか、また重大な事態を引き起こすのである。

○ストーマ・クランケに精神科的なムンテラを十分すること。ユーモアを持った、明るい日々を暮らすように、医師の責任として指導すること。

○ストーマ食について、もっと研究、暖かくクランケを教育しなくてはならない。
 冷たく突き放すようなことではなく、自信を持たせるようにして、親切、丁寧な相談に応ずること。医師、看護婦、E・T、栄養士、家族一体となって行なう必要がある。

○ストーマ閉鎖手術は、腹部外科の医師であれば必修のこと。腸切除、吻合の基本の術式に加えて、時期の条件、決定である。永久か一時的かは、造設した医師が自分がどうしても出来ぬ(転院、医師が転勤、退職場合)時を考慮に入れて、手術記録は丁寧に書き保存し、必要な場合は速やかにコピーして送付すべきである。
 私の場合は、ストーマ手術を行なった医師の診断に基づいた転医紹介状が災いして、F病院の外科医師からは肛門の神経、括約筋が回復不可能だから手術出来ないとして閉鎖手術は拒否された。確かに肛門を使っていない5カ月間、肛門の運動は悪いが、ここでは前医の紹介状が先入観となっていた。

(未定稿)

[作成時期]  1988

(C) Akira Kamita