映画の話/アメリカ的な 文化
1 アメリカ的な/歴史とは無関係な 歴史がないということは単純であるが、世界的な問題で言うなら、人工的な国家というか、実験場、収容所、流刑地、逃避先、すべてを放棄させられたものの新天地といったことがあるのを無視すべきではない。
ヒステリー性
2 ヒステリー性/人種の坩堝とか
人種の坩堝とか/成金主義 拝金主義 刹那性
成金主義/サクセスストーリー
サクセスストーリー/蓄積されないのさ
蓄積されないの/心とか 思想とか 文化が
心とか/何もなくても平気ということ このようなことは人間が累積的に存在するのだということを凌駕しているのかも知れない。
何もなくても平気という/反対かもね
反対かも/難しいのさ
難しいの/例えば
映画
3 映画/現象的で 感情的で 思考がない
感情的/即物的ということ
即物的という/起伏だけなんだな 反応だよ、ただの
起伏だけなんだな/肉だけ 文化ということが、すでに死に絶えているということから始まる文化という、文化という抽象性の枠のみが文化自体となってしまっている。この自己評価としての文化概念が、否定性よりも、現実迎合性に向かっている。
肉だけ/過去とか 未来とか 創り出すこととがない
創り出すこととか/宇宙の奴隷にならないってこと
4 宇宙の奴隷にならないって/根源を創ること
根源を創る/戦い
戦い/神との
神と/存在を 存在たらしめる 絶対的な外因
存在たらしめる/抑圧だよ
抑圧/殺して、自由にすること
殺して、自由にする/取り込んでしまう
取り込んでしまう/全体という神に
全体という神/弱いのさ
弱いの/とりこもうとする心が
とりこもうとする心/自らではじめられない
自らではじめられない/衰弱さ
衰弱さ/ははは
5 夜/暗い夜
暗い夜/光の途絶える
光の途絶える/闇
闇/今は 昼間さ
今/存在
いい加減にしろ/心
闇の中を走る言い知れぬ不安
6 落下速度
錐もみ状の落下
7 「そのナイフを貸していただけません」
うっすら生えた産毛を細いスポットライトに光らせて、女は唐突に声をかけた。
8 酔いのゆっくりした回り方というのは、なんとも妙なもので、早い酔い方とは本質的に違うようである。何が違うのかと言うならば、まず、ある種の渇きというようなものが、特に粘膜を中心に冒してくる。その次に神経的な、痙攣的とでも言おうか、そのようなひりひりしたしびれと偏りがやってくる。軽い頭痛が落ち着かない苛立ちやある重さとなってこれに伴う。
ひとときはこのようなことから回復するのだが、その次には何やらの物足りなさといったものが昂じてくる。しかし、この後再びアルコールを求めたとしても、長続きしない。軽い、連続的な拒否反応が生ずるようである。ただ、意識的にこの状態から脱するために無理に呑み続けることもできないわけではないが、その結果は快適なものとはいえないだろう。
9 雨のハワイなどと言っても、これは明け方の話である。
ホテルの窓から、まだ明けやらぬ紺色の街を見下ろすと、街灯の光に照らされて路面が光っている。朝の太陽の下で走ろうと考えていたので、少しがっかりしたが、続いてヨットパーカのフードをかぶって走るのも悪くないとも考えた。
AIRと呼ばれる方式の新しいシューズを試すのは、考えただけでも楽しい。靴が汚れるなどと考えるのはとんまな話だ。アスファルトに撥ね返る飛沫の中をとことことことこ駆けていく、じつに快適な想像であることか。
しかし、まだ暗い明け方の部屋で、二本のCOORSに軽く酔いながら考えている小さな興奮とその期待とは異なって、この島の雨は止まってしまった。まだわからないが、これは急激な、それでいてこの島特有の恒常的な回復と太陽の支配の強烈さが、恐らくあっというまにこの海の国を敝うのだろう。
10 ハナウマ・ベイでの子供達の騒ぎようは、この島の一日の奇妙な天気の移り変わり。例えばシャワーの件、風の具合、雲と日差しとの関係など、大人が気にするようなことを全く気にしないのかというとそうでもない。
11 この島に来るのは、やはり国際的な田舎者だということに間違いはないが、それでも暮らしやすさやその他思いがけない気候の繊細さなどという点で、とりあえずは興をそそられないことはない。
12 とにかく帰途についているわけだが、この非日常というよほど日常的な暮らしが日常という非日常に回帰するという点については、その落差が困るというべきか、非日常を日常化しているきちがいじみた世界都市の実質的なローカリティといったものが、歴史的にきちがいじみているといえよう。
これらは、しかし退廃である。スポーツだとか、肉体の享楽、知能の享楽などという、現代的な非生産性は、退廃以外のなにものでもないということは、明白なことである。
13 この中身のなさは何に由来するのかというのならば、それはこの世界の生命力に起因している、あるいは持ちこたえきれない、おびえきってしまっているというようなことがあるからにほかならない。
これはどういうことなのか。
(C) 紙田彰, Akira Kamita.