【登録 2011/10/09】  
[ 詩篇 ]


〈追悼〉

十時二十一分
 (土方巽へ)


月が曇っていた
だから妙な気がしたのだ
その時間に
眠りの光の中に
家族とともにいたのだが
苦痛は存在すると
あの人は
肉体のきわみに達しながら
その不思議な笑いを
匿しもったまま
地球の核心へ
すりぬけていったのである
だから あの人は
復活してしまったのかもしれない

 土方巽へ
昭和六十一年一月二十一日

(C) 紙田彰, Akira Kamita.


[作成時期]  1986/01/21