添える
吹きこぼれる感傷
添えられて夜を識り
拒なな情行をとぎられる
添える
極北 ( さいはて ) に沈まる予望
回顧欄から浮かばれる
失意さえ彷徨う
冥い宇宙の悪意から占術
散在する白薔薇を星座して
添える
添えられて意志せよ
霊たちを交感せよ
瞳孔に開いて夏が添え
添えながら
梅雨を秘法して
そらいろの鳶の絡め
添われて燻する海鐘……
添える
白蒼する顔うつしのとどめ
声帯を春するサディスムの醒め
捉われる夢の添え
緊縛フォトから反撃する私服のメモ
紫陽花の羞恥責まる黙秘の陽根
添える
唐草にくぐる 黄玉 ( トパーズ ) の透し眼に
夏の溜まりから紅潮されて……
神添えよ 画布に燦く熱病のやりとり
添えつづけて
微かする虹の揺動から
おとしつづかれるロマンチシスム
たぶらかせる絶望を狭間して……
タイテエムの忍びなびく破砕
流浪を孕めて
つめたくこぼせて
添える
闘いのために祈りを
添われて鏡にぬける
刻の野辺送りに参画されて
奇しくいちじくの実割れ
添えて……
非在から添われて
(1972.6.14 白昼)
(初出 詩誌『立待』第8号/昭和48年9月刊/発行者・佐藤泰志 1973 )
(C) 紙田彰, Akira Kamita.