【登録 2007/05/02】  
紙田彰[ 断片 ]


作品「転移」1, 2

 相転移phase transitionとは、ある物質の相が別の姿の相に転ずるということで、超ひも理論の数学ではひもエネルギーで締めつけられた次元空間が別の形態の空間に移行するというものである。
 これは、いくつかの超ひもの幾何学や数学が主要なひとつの理論の別の現れであるとするM理論や、ブラックホールからビッグバンが生まれるなどのアイデアに通じるようでもある。
 また、見方を変えるということで対象が変化するということだけではなく、物質そのものがおのずから別の物質状態あるいは宇宙相に変化するということをも示唆している。

 次元はそもそも理想化されたスケールであるが、「転移1」は、曲率をもった次元が物質の中に突如として生まれた空間が裂けて相転移するときに飛び出したイメージである。4つの力、あるいは4つの次元。フロップ転移(ひも理論の幾何学であるカラビ-ヤウ空間で、空間の相が入れ替わることで空間の破滅を修復する転移)を暗示した、千切れそうなひもエネルギー。
 また、「転移2」では、同じ相転移でもまったく形の異なるねじれた管、環のイメージ。視点を同時に合わせることはできないが、同じ物質が同時に異なる位置に存在している。
 作品のそれぞれには、裂かれた形のひもが黄色の絵具の底に埋め込まれている。

(未定稿)

[作成時期]  2007.05.02

(C) Akira Kamita