【登録 2003/01/08】  
紙田彰[ 詩篇 ]


diffused reflection

 I
カットグラスに映る
魂の横顔

粒子が互いに寄り添うと
誤差の論理で
美しい立体が迫り出してくる


 ii
魂の向うを見ようとする
正確な視線
厳格な図法パースペクト
カードを配る男が華奢な指の根元で
ルビーの指環を廻す


 iii
空の高みから
石英や水晶、方解石の切片が
七色の燦きを発して
雪のように舞い降りてくる

見えない輪郭が
たしかに物質的な光となって
幾何学的に交錯している


 iv
土色の家畜の蠢く
灰色を帯びた村の外れで
ひと声高く 狼の咆哮
風に含まれた赤い砂塵が重なる


 v
思考の形、思考の色、思考の瞬間と永遠!
はじめてふれる魂、生命、あらゆる運動系

この存在と非在を啄むことなかれ
思考の生み出す一瞬の抽象


 vi
赤ワインの溶けだす吃水線を見上げると
夕空を突き抜けていく
純白の鳥の隊列

鉤型の速度を
青い月が直角に貫通する


 vii
さし入れれば
向うからも さし招く
硝子のような絡み合い

水浸しになった思考が
鋭角的な物質を
析出する


 viii
都市の蒼い夜の深みで
道筋にひとつきりの街灯
溶け入りそうな
柑橘系の光のイリュージョン

混濁する絵具
光に照らし出された死面デスマスク
厳かな黄金に溢れている

(未定稿)

[作成時期]  2003.01.08

(C) Akira Kamita