(彼らの貌が)
――2003.6.3 初めての個展で
彼らの貌が
その思慮深い あるいは狡智に長けた相貌が
この白い室の片隅に泛びあがる
ひととき打楽器の叩音が跡絶えたとき
低いしわがれ声で
おまえの始まりは何だ と
低い低い地の底の部屋と
同化して
問いつめてくる
だが 始まりなどない
あるのは終りだけだといっても
はじまりの光の眩ゆさへの
憧憬はせつない
この部屋のかすかな音の
つらなりと断絶
そして 糸のような液のような
ながいながい嗚咽
なつかしさ、繊細さ
もう ふたたび出会うことのない
はじまりのあの日よ
明るい人工光の 光暈の中で
発光するオレンジの、黄色の、白の織りなす影のあわい
静謐だけが
壁の絵たちとともに
何かをたたえている
(未定稿)
[作成時期]
2003.06.03