画家になる少女
――2003.6.5 初めての個展で
水に溶ける絵の束を抱えた
少女が
降りはじめた雨に
逐われる
街の灯が乱反射する時刻
建物の壁に貼りつく人々
おい、ここだ、ここだ
少女の描いた鋭い曲線が
やはり刃物のように囁く
おい、ここだ、ここだ
たったいま走り出た画廊の
余熱が
全身に満たされている
わたしは絵を描くためにのみ
生きているのだ
少女の性急な想いが
雨に濡らすまいとする細い腕に
力を伝える
ひとりの画家が
生まれたのかもしれない
(未定稿)
[作成時期]
2003.06.05