【登録 2003/06/15】  
紙田彰[ 詩篇 ]


画家になる少女
――2003.6.5 初めての個展で


水に溶ける絵の束を抱えた
少女が
降りはじめた雨に
逐われる

街の灯が乱反射する時刻
建物の壁に貼りつく人々

おい、ここだ、ここだ

少女の描いた鋭い曲線が
やはり刃物のように囁く
おい、ここだ、ここだ

たったいま走り出た画廊の
余熱が
全身に満たされている

わたしは絵を描くためにのみ
生きているのだ

少女の性急な想いが
雨に濡らすまいとする細い腕に
力を伝える

ひとりの画家が
生まれたのかもしれない

(未定稿)

[作成時期]  2003.06.05

(C) Akira Kamita