【登録 2005/09/05】  
紙田彰[ 断片 ]


(明け方から削り始める)

明け方から削り始める。今回の会期中は、毎日、明け方から大作に取り組むことになろう。すでに五分の一は出来上がった。
このところ、絵を「描いて」いるという言い方をしないで、「作っている」と、他人との話で言っていることに気づいている。
たしかに、サンドペーパーとニードルで削り、筆は、絵具を叩きつけ、刺青のように刻線の中に埋め込むために使っている。
あとは乾くのを待ち、次の一枚に同様の作業をする。
また、どのように絵が変化していても、体の奥底から湧き上がるものを信頼して、失敗するなどとは微塵も思わない。
結局、このことなのだ。技術が身についたとか、感性が備わってきたとかいうのではなく、ただ「えいよ!」の覚悟と、出てくるものへの信頼だけが、およそ描くことの神髄なのだ。
そうすると、何が失敗なのか? 何をもって失敗とするのか?
つまり、結果としての作品の成否は本質的な問題ではないのである。あるいは、結果としての作品をも「失敗はありえない」と捻じ伏せてしまう、立ち上がるものがここにあるのだ。

2005年6月「第8回個展」会期中の断片

(未定稿)

[作成時期]  2005.06.23

(C) Akira Kamita