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Vの字になって発狂する
碧の湖が小波のために淡い
旅のさの
夕焼空と雁の群
太陽はいま沈む
断頭台の首も――

わが対称形が歩く
秋の風がつらぬく
あてどない旅
ポプラよ、銀杏よ、楓よ、
雑木林を渡る風

いつのまにか海に出ていた
しぶきに見え隠れする巌
また島は動かず
地球が母の姿を現わす
ああ 心が凍る

秋の終わる日
人も自然も枯れてゆく
毒草が地軸の折れ目につぎ込まれる
眠りに包まれ
わがメランコリイの果て

死者もまた同じ
夜汽車よ、海と星よ、
暗い波打ち際に
想い出は寂しい

別れの花を摘む
闇の女の裸体
銀色の毛皮に抱かれるころ
初雪はふるさとを訪れたろうか

月の涙は蒼きもの
昼間からうっとうしいのに
月光と雪の白い道
月のかけらよ
粉雪に埋る夜々

長い道を歩いていた
なぜそのような無用をするのか
いつまでたっても謎である

土色の骨が指からつきでている
純白のカモメが
山の端で赤くなっている
雪が燃えているからなのか

時が割れる
吹雪、一瞬の吹雪
鬼のような目つきで神に祈る
空が晴れて窓から覗くと
光のほかには何もない

風が吹く
そのたびに涙する
雪が降る
そのたびに涙をこぼす
悲しいことなど何もない