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尖った強迫観念
down townのとあるバーで
手を洗う酔払いのニグロ
カウンターの金が減っていくので
氷を噛み砕いた
風の噂に
黒い髪の女が裸で失跡したという
あの、独立家屋にいた女
庭を掘り起こすと
Bakuninの著作と嬰児の小骨
目の覚めたときにする思い違い
今年もまた暑中見舞が来た
platanusの一つの枝に
白い首がぶら下がる
夏が過ぎ、また同じ夏がめぐる
けれども、宿命というよりは永遠
心が破れるというよりは
酔いつぶれていた
――また黙って旅に出ている
人間をさらに進化させて翔(と) ぶ
翅の、謎めいた
ふん、
夜だ
友人たちは
人間の中にはいないとも思えてくる
意志を支えるものは
反世界的な無為と
永遠に加速する死だと
また旅に出て考えている
一文字に収束する烈風
マルセラという名の地の女神よ
神の素因に抱かれて
Los Angelesでは
人々が狂いはじめていた