浣腸遊びエネマ・ゲームのための十干 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

酒荒の胃。そのむかつく波と靄の中に、眠りの時間を勃起する。

夢に覚まされることのなき夢の激しいまっくろけ。

ひのと。火の鳥の人通りは助動詞の谷間。
すっぼり。すっぼり、滑らせて恋を炊かしめろ。うすい復讐の鏡一枚、片手にもたせて。
 さえぎる。さえずり声の一直線を、ふいに
 よけて、カラスアゲハとスズメの、人間を
 さらに進化させて翔ぶ、翅の謎めいた
                  ふん
                 夜だ!
 
つちのえ。つづめて言うところの“げえっ”。
味覚の苛苛な襞、膜。ねっとりと硝子の裏の闇の屁。

有卦にあたる魔王のほくそ笑み。領域願望の駒、緋の呪印をぼんとおされて、土の景色のはだける。

交体。時間の蟲のシャワー。

膣にまどろんだなんて、へっへっ、糞味噌。

つちのと。辻の戸締り。
鍵。吊り首を胸飾り、一軒一軒の修羅場を覗き込んで、手淫するぎらぎらした蛙。

沼には沼通り。とろとろした毛の街道。円筒形の建物がつつーっと並んで、カレンダーがまっかな日付を反吐。