〈火〉の装飾性について (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

三十年間で 屍体の
記憶が流れだす
イエズドの灰色の丘
手打模様の銀の首輪が
背教の徒によって
盗み取られる
その時に 丘から望める
イエズドの澱んだ街並に
きまって 甲高い
円屋根からの
鐘――

夜ともなると
女の骸を求めて
気のふれた傴僂が
徨い出る 砂漠の
赤錆色の月が 声をあげて
死者の霊を
喰っている

風と 危険な
翼のある種族に
掠められる 死肉
さらされた白骨に
地底から這い上がる
蟲類の 集団による悪事
脂は 当然にも
数少ない樹木の睡りを
助長する

羊水の
あふれる瞬間もある
孕み女の尻から
完全に乾燥した