孤島 (実験詩集「浣腸遊び」, 1974)

 II
きれながの畑――
娘の繊い毛の道を辿る
穴の 縁続きに裂けて
耕やされたばかりの茎にはじく
水溜を褐色の花に吸われ
うす蒸気をくゆらせ 火の予兆
陽が 赤目の
毛細血管を温くめる 娘の
管管にからまれて 緑色の
反吐に染まる またたくまの
水平線の剥がれる屈辱――
 血の迷路よ
 闇吐きの放流よ
 攣曲する道は 崖の
 向こうに 突き刺さる
 かすかな悲鳴

乾いた蛇の巣跡
波音の苛立つ深呼吸
わだちの両端にぶらさがる
死胎児―― 小舎から
生える蕺草のつる
転がる漂白臭または化石の頭蓋骨
ピアノ線がつるんと
すべる

 無風状態で
 塗られている壁 物怪など
 游かび 斑らな蜃気楼
 水晶をゆるむ塔に篝り
 赤赤く発情される蠎を夜景
 煌やまぬ埠頭からの鬩ぎ