未刊行詩集『strandにおける魔の……』05: 忍び笑う魔

失神しつづける樹木や草
翅を凍りつかせた虫は
とじこめられた腺という腺をしめなおし
魔の環境に順応しようとする
だが 地を揺るがすような
ひくく忍び笑う魔は
なおも
朝の捕縛繩をゆるめない

均衡と静寂と
微動だにせぬ反復する呪い
その深いけがれ

ときどき ぴくりと
うちかえす波のような
生命の停止が生まれるが
すべてが異様なガスになり
こもりつづける

忍び笑いの魔が呑みほしたとき
夜は 型通りの手続きで眠る
土の起伏
山脈と湖 処刑の丘や底なしの沼
永遠に耀う大河が
夜の痕跡を蔽いかくす

痙攣的に
一匹の野ウサギが躍りでる
電光に打たれたサイクル!
忍び笑う魔は
その小動物を手にかけると
すばやく粉雪を気化させる
血のりと血しぶき
朝を弔う跳躍!
幕は墜落する