未刊行詩集『strandにおける魔の……』09: strand における魔の……

重い水分 蒸された空気
緑の植物の緑が閉じ込められる
濡れた土から覗く根の青さ
噛みしめるようなはかなさ
永遠の崩壊という
泥と砂の舞踏
河口の底でうねりつづける
排泄物

一瞬の連続性
封じ込められたつながり
つらなりという断片
おごそかな微粒子の静止
澄明な汽水という逆説
その鋭い針が
垂直の航路を拓く
音楽という物質を撒き散らして

都市が立体であるような錯覚
だから 人々は地を這わねばならない
人間とは歯軋りしながら埋もれる背だ
地の震え 凍る塩
都市は むせびなく背の上で瓦解する

では 喉にしたがおうか
横たわる家屋のつらなりを
地に 岩に 水に繋げ
暁に覚える嘔吐 食欲 また嘔吐
ああ まだ食道だ

遡ることのできない迷路
河口は河口だ
球面だ
無数の冠状突起
砂と瓦礫
どんより曇った
夜の激しさ