未刊行詩集『strandにおける魔の……』11: 眼の街

その牙が噛み砕くのは誰の腕か
姉さん! 飢えた胃の荒れた粘膜を乾板にして 必ずやあんたの唄を写しとるよ ぴったりと

III 爛れた眼底
おれの脳髄はからからに飢える
そのとき
背丈の三倍はある巨大な向日葵サンフラワー
薬局のオートドア越しに
千本の根と一万本の触手を伸ばし するり
太陽は とうに子宮に呑み込まれ べりっ
磨き粉が 磨き粉が 光合成
商店街の中心にある踏切警報機の
正確なツエー音が肛門科の玄関をくぐる

姉さん! あんたへの愛はまっぷたつに割れていた 破れた鏡にはあんたの美しい毛の波々は映らない けれど姉さん! あんたへの愛はまっぷたつに割れていた

眼の穴から盗まれているんだ!

はたはたはたはた はたはたはたはた
キアゲハのアゲハのリンプンが
町内案内図の看板に貼りついて
裏側には
死体置場の狂い札がびっしり

姉さんの町の 姉さんの紙片がひっくりかえる
おれの眼の うすもも色の襞すじに
おれの透明な紙片がぴくぴく
おれの透明な紙片がぴくぴく