[資料] 戒厳令下の北京を訪ねて【上海篇】[08](直江屋緑字斎)

 だが、この日……。
 北京放送は、「上海市中級人民法院は同日午後、上海ビール工場契約労働者、徐国明、上海無線電信工場労働者、厳雪栄および無職の卞漢武の3人に対し、市高級人民法院の死刑執行に関する命令を宣告。3人はこのあと刑場に護送され、銃殺刑に処された」と発表していた。
 さらに死刑執行は見せしめのため公開され、約3000人がこれを見守った。3人は次々に首の後ろを打ち抜かれたという。
「この事件は6日夜から7日未明にかけて、同市光新路の踏切で発生した。6人が死亡、6人が負傷したほか、客車9両、警察パトカー6台、郵袋900個が焼かれ、50時間にわたり鉄道の運行がストップした。4日の北京・天安門広場の武力制圧で多数の死傷者が出たとのうわさが流れる中で、『軍人、戦車を運ぶらしい』と知った群衆が貨車を阻止していたところへ、北京発上海行きの列車が突っ込んで騒ぎが広がった」(共同通信6月22日配信から)
 処刑された労働者の名前を、私はしっかり書き留める必要があると思った。何が真実であるか、それは誰が何をしっかり記録しておくかということと無関係ではないからだ。

 処刑のあった同じ上海の高層ホテルの空中の部屋で、私は暗い、あまりに暗い夜に閉じこめられていた。

(中絶)   

(c)1989, Akira Kamita