[資料] 天安門事件: 内側から見た恐怖政治[01] (佐丸寛人)

 商店も多くがシャッターを下ろしている。彼らのストは初めて見た。また、これは店員が書いたのではないかもしれないが、壁に黒々とペンキで「解放軍が学生を潰した。建国以来の快挙だ」と皮肉を書いた店もあった。
 広場に着いた。さすがに人が多い。どこまでが活動家でどこまでがやじ馬かは言い難いが、とにかく広場は人で埋まっていた。国旗は半旗になっている。そして、いつの間にか設置された放送所が盛んに声を張り上げていた。
「民衆を殺した27軍の指揮官は楊尚昆の息子だ! 楊尚昆を倒せ!」「ファシストたちを許すな!」「鄧小平を絞首刑に! 李鵬を絞首刑に!」

中国北方A市のデモ(1989, 撮影: 佐丸寛人) この労働者たちを撮影した後、私は警察に間違えられた

中国北方A市のデモ(1989, 撮影: 佐丸寛人)
この労働者たちを撮影した後、私は警察に間違えられた


 労働者の運動家たちを満載した一台のトラックが来た。先頭の男が拳を振り回しながら盛んにアジっている。私は彼らをカメラに収めた。すると、荷台の上の何人かが私を指さして何か怒鳴っている。始めは何かわからなかったが、実は彼らは「あそこにサツがいる! 敵がいる!」と叫んでいたのである。続いて興奮した肉体労働者ふうの男が数人私に殴りかかってきた。その時、私は黒い腕章を巻き、スローガンを書いたシャツを着ていたのだが、何の効果もない。怒り狂った彼らは酔っ払いのように目が座っており、私が「私は警察じゃない! 運動を支持しに来たんだ!」と叫んでも、全然聞かない。あわやという時、学生たちもすっ飛んできて、私の周りに壁を築いてくれた。彼らは先ず私に聞いた。
「どうしたんですか」
「写真を撮ったら、秘密警察に間違えられたようだ」
 さすがに学生たちは理知的で冷静である。私が警察でないと判断するや、周りの人々に大声で言った。
「この人は敵じゃない! この人は学生だ! 誤解だ!」
 憎しみは伝染するものである。私も私を殴ろうとした連中をぶちのめしたいという気持ちに駆られたが、学生の壁のため双方とも手が届かない。学生の声が及ばない所からこちらに突進してくる者たちがまだいたが、私は学生たちに守られながら、無事「聖域」にたどり着いた。真に不愉快な出来事ではあったが、とにかくこの身もカメラも大丈夫だったのだから、幸いとすべきなのかもしれない。「聖域」には数日前私が連れて来た学生の一人がいた。