[資料] 天安門事件: 事件直前の記事等の翻訳[03] (佐丸寛人・訳)

 今の時代には、二つの大きな基本的特徴がある。一つは、科学技術革命がますます速く人々の生存様式を変え、ますます深く世界歴史の発展過程に影響し、科学の社会化と社会生活の科学化という趨勢がますます明らかになってきていることである。もう一つは、平和と発展が既に時代の主題にまで上昇していることである。とりわけ注意すべきなのは、コンピューターを代表とする情報科学と情報技術の飛躍的発展及び多くの全地球的な問題の出現が、既に世界の殆どすべての国家・地域・民族をますます緊密に一つに結びつけてきている、ということである。このような情況下では、一つの国家・一つの地域・一つの民族の発展は、しばしばその他の国家・その他の地域・その他の民族がともに発展することを要求する。しかもそれは平和的条件下での発展、全社会の総合的発展、個人と社会ないし個人と個人とが調和し一致した発展でしかあり得ない。従って、我々は現時代の要求に応じて、哲学上では科学的理性と人道主義の精神を継承して発揚し、両者をマルクス主義哲学の中で相互補完させ、もって現在に於ける中国文化の基本的精神を作り上げなければならない。
(中略)
 もし、五四運動がマル・レー主義の中国に於ける伝播を加速し、マル・レー主義の中国に於ける影響を拡大し、そして最後には自己の思想的武器として中国人民にマル・レー主義を選択させた、と言うなら、現代的マルクス主義こそ我々が今日作り出すところの新しい文化選択となるであろう。現代的マルクス主義を創造する過程で、これを理論的基礎とする社会主義の新文化を徐々に建設することが、たぶん正に現在に於ける中国文化の発展方向となるであろう。その実質は現有の「階級闘争文化」或は「革命文化」に対する止揚である(実際、この過程はもう始まっている)。そしてこれに従って確立される基本的文化精神が、則ち形式合理性の力を借りて自己の内包を豊かにする科学的理性と人道主義との統一なのである。(王鵬令「論当代中国的文化選択――為紀念五四運動70周年而作」『光明日報』1989.4.3[哲学]第 397期。翻訳: 佐丸寛人)