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【詩篇】紙田彰



(この青さ)


この青さ
蝉が鳴くはずなのにこの朝の風
おまえの肌の灼熱よ

雲を裂く
狂ひたつ蝉
朝の肌

鈴懸の黒い木蔭に潜むもの
何がプラタナス
何が首吊りの木だ

この力の源は精神の側にも肉の側にもない
思考という全く抽象された次元にある
この力の及ぶ範囲は人間そのものを超越したところにある
つまり存在というあらゆるものを払拭しただそのものでしかないという根源

雲のことを書きたかったはずなのに 我が思考というよりその睡りは雲を見ながら思い出を夏をこれからの闘いを 伝うべきこの力を

形はいい 声もいい 強さもいい
ただ眠ること ただ眠りながら戦うこと
おまえは恒常的に存在の始まりなのだから

物質で何ができたって ただそれだけのことだ
神秘が現れたってただそれだけのこと
次元が違うんだ 永遠という奴は
永遠に思考の形であること 
おお 永劫の戦闘
誕生だけの無限

だが力は発揮される
力は 物質は 精神は いつでもどうにでもなるのが当然なのだ
たいしたことではない この宇宙と同じように
だが力は病を救う
これは非現実を現実にかかわらせることの現実的な突出である
心が肉の世界につながるものであれば これもまたそれだけのことだ
問題は自ら誕生できるかということである
創造力と戦意が思考という卵の滋養である

(1988.8.5. 6:31)


(c) Akira Kamita

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