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詩集「空中の書」 |
静謐のひととき静かな睡り、ときとして凍るような夢 幼年期の薄墨色の景色から、渦巻の形をして浮かび上がる極彩色の洪水 耳鳴りを伴って訪れる体表の微妙な顫動、輪転機に附随する独特の匂い 蜜柑の涸いた皮、ソーセージの包装紙 夜が好きというのでもなく、嫌いというのでもなく 眼の芯にあたる空洞に棲む者たち、栓をした頭脳などと……銃口がこちらを向いている、空間には紫の翳が流れる 声を出してはいけない、頭の禿げたフランス人が囁く 燈を点してもいけないのだろう 革表紙の書物の位置がずれている ときおり数本の蝋燭が濡れたように光っている 罰を、鞭を、割れたビール壜を 数秒ののちに静けさの極限を迎える、喉から弱い息が洩れるだけに…… |