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詩集 「strand における魔の……」

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strand における魔の……

浜辺に 磁気帯びる魚
繊い吐息 転がる無数のガラス玉
棘のある尾 棘のある砂の
棘のある毛が
崩れ落ちる
列をなして天上に消える熱

strand における魔の
褐色の爪 唇 真珠
ひからびた腔腸動物の死体よ
ナイフが反射する光
その先の 心臓という石
数々の背中が埋められ
青まだらの空 赤まだらの海

奥行きのない波がよどみながら
砂州の窪みにとどこおり
放射状に水をおかす
おかされて溶ける
錆色の渦

埠頭という石積み
黄昏の日差しが
雲の切れ目と水のわかれをむすぶ
ただその地点だけに眠る
神々の不倖な幻想

この地図の皺
指の脂のモザイク
鈍い光沢の尾根に沿って
strand における魔の
干渉作用が
引き裂いてゆく
反り返る紙の裏 薄いへり

重い水分 蒸された空気
緑の植物の緑が閉じ込められる
濡れた土から覗く根の青さ
噛みしめるようなはかなさ
永遠の崩壊という
泥と砂の舞踏
河口の底でうねりつづける
排泄物

一瞬の連続性
封じ込められたつながり
つらなりという断片
おごそかな微粒子の静止
澄明な汽水という逆説
その鋭い針が
垂直の航路を拓く
音楽という物質を撒き散らして

都市が立体であるような錯覚
だから 人々は地を這わねばならない
人間とは歯軋りしながら埋もれる背だ
地の震え 凍る塩
都市は むせびなく背の上で瓦解する

では 喉にしたがおうか
横たわる家屋のつらなりを
地に 岩に 水に繋げ
暁に覚える嘔吐 食欲 また嘔吐
ああ まだ食道だ

遡ることのできない迷路
河口は河口だ
球面だ
無数の冠状突起
砂と瓦礫
どんより曇った
夜の激しさ

透きとおる方舟
綿密な計画という頭痛
眼の形をした星が
膜の重なりをすりぬけて
蛋白 蛋白
こぼれて燃える
肉の連鎖

strand における魔の
おだやかな吐息
呪われたひとがたが
黒い水に溶けてゆく
全身から滲み出てゆくもの
思い出せぬもの

嵐の中に
網を投げ入れ
名前の数だけの
生命を手繰りよせるひとがたよ
すでに 火山脈は
水の殻に包まれている
この浜辺を境界にして



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