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戒厳令下の北京を訪ねて

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 6月3日の深夜から、私は次のようなアピールをいくつかのネットワークに流した。

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 虐殺が始まろうとしている   緑字斎
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中国人民、学生に断乎として支持を!

この言葉だけでしか、この腐りきった国から、虐殺される人民に連帯の表明を送ることしかできない。悲しい。くそ。
これは、こんな国の甘ったるいネットワークなんかに発しているのではない。
人民共和国の労働者、人民、大衆、学生に向けているのだ。
僕たちはこの歴史の痛切さを思い知るがいい。

                                緑字斎

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中国の学生は銃弾に倒れつつ…… 緑字斎
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銃撃の中を倒れながらもインターを歌っている。
僕たちができるのは断乎たる支持だけなのか。
                   緑字斎

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戒厳令司令部を弾劾する!! 緑字斎
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戒厳令司令部、並びに中国共産党指導部を糾弾する!!
この歴史の痛切さを、僕は自ら思い知ることによって、中国人民と連帯することしか、今はできないかもしれない。
また、この熱い心だけで、僕は果敢に闘う彼らとつながるしかできないのかもしれない。
それにしても、なんという虐殺! 国家権力というもののこの残虐さ!
いくら出口がないとはいえ、この暴挙は許さざるべきものだ。
人間は国家の生贄ではないことを、僕は熱い涙とともに訴えたい。

                                緑字斎

 そして、このアピールを見てメールをくれたネットワーカーに次のような返事を書いた。
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 小生は国家が人間の生命を左右するということが断じて許せないのです。
 人間存在が何ものにも支配されるべきでない自由と、また何ものにも奪われるべきではない存在としての権利、これを侵すものは何ぴとたりとも許せない。
 この意味では自然の摂理といわれるものでさえそうです。神も宇宙も地球もすべて存在としての人間と常に一対一で向き合うべき対象でしかなく、これは何かに属しているとか、それゆえに何かに組み込まれるということではなく、断乎としてただ一人でそのような絶対性でさえ相手として向き合うということなのです。
 神が何を望もうとも、小生はそんなことには立ち向かうだけです。
 そして、小生はこのたった一人であらゆるものと闘う存在の孤独を、国家だとか、権力だとかで好きなように生かされたり殺されたりすることに我慢できないわけです。
 小生ができるのはこの心を、それこそ国家ばかりではなく、自然の摂理からさえ虐殺されているあらゆる存在に結び付けようと努めるばかりです。
 熱い気持を、熱い涙を、人間のもっとも深いところに蓄えて、何が起きているのかを凝視していかなければならないと思うのです。

 残念ながら共産主義の壮大な実験は終了するようです。
 これから、多極的な不安定な世界構造へと変わり、その結果、どのような危険な状態が将来するのか。
 日本だけが安全だという神話もじきに崩壊するでしょう。
 中国はどう転んでも、出口がないのです。
 解放軍の分裂から内戦という事態まで想定できないわけではありません。
 上海コミューンという説さえ、小生は耳にしました。
 ところで、ビザがとれれば、今月末に北京に行くつもりです。
 この眼で見ておかなければならないということを、小生は連帯の証として考えています。
                               緑字斎


 そして、私は天安門をめざして旅をすることにした。


(c)1989, Akira Kamita

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