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紙田 彰による 詩的絵画の試み
――「超ひも」シリーズの画家・紙田彰
poetic art by KAMITA, Akira |
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(作品について) 紙田 彰 広大な影がたち現れる。あるいは遠ざかっていく。 その建物群のような集積する影は歴史そのものであるのか。過去そのものであるのか。私は影の中に蠢くひもを描いてみた。揺れ動く、律動する、沸騰するそれらの環を。 それらは落下するようにも思われるし、永遠にとどまるようにも思われる。しかし、一瞬にして位置と形を変える。 次に記憶の残り香とでもいうような橙色の空間を重ねてみた。水蒸気のように立ち上がる性質をもっているのか、それとも降りつづく疲弊したガス――。重くたちこめる粒子たち。 そのとき、こちらの絵には量子が選択され、向こう側の絵には量子は出現していない。 私は、二枚の絵をひとつに描いている場合の量子と別々の相似するものとしての絵を描いている現実の二枚の絵として、自ら選択しているのか。 光は片方では省略であり、もう一方では光のスリット。 現れた量子の見えざる向こうには、別の次元の空間が映っているのか、閉じこめられているのか、光に反して、光のゆきつく先が思われるのである。 第12回個展で |
「宇宙音楽」の事象地平 紙田 彰 僕はmicaのように 剥がれ落ちるべきものが好きだ か細い線、透明な薄片、かすかな光 ある種の記憶のような 僕はmicaのように 重なりつづけるものが好きだ 色彩がとどこおり 消えてゆく平面 忘れうべき記憶のように 近づいて裸眼で凝視すべきである 重層するプレパラートに 複雑な罅割れが生じ 僕は閉じ込められる 幾多の異相が 本当は一つであるように こちらに光があるのか あちらに光があるのか 物質は存在するのか しないのか 僕はそのあわいの事象地平で押しつぶされる 第12回個展にて |