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詩集 「strand における魔の……」

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魔女の翔く

大理石の ふつふつ
あぶくの唄う沼底に
横たわりてあるもの
満月の
光の管に吸い込まれつつ
魔女の翔く

地平線すれすれの深夜
植物のごとく生い繁る
星々の住まうへり
銀色のあぎとの嵌まり込む

割かれた大地
脂の河がゆったり流れ
満月のいびつさに慄える
光の渓谷が
産毛の波を走らせる

なんの吉兆
赤黒く脹れる暗雲の
吹き溜りの中を
夜会服に身を包んだ
妖しい女が翔く

白い棺の並ぶ館
動物性の熱い吐息が
螺旋階段の途中で
金属の打ち合う音とともに
その闇に呑み込まれる

まっ白な棺の蓋を開けながら
無数の渦を解き放し
沼の面すれすれに
女の影が浮かび立つ

満月を切り抜くかなきり声は
月の痕跡にとどまり
声の襞を夜空にめぐらし
炎のような枝ぶりで
生き生きと
無数の果実を結ばせる

うちつらなる棺よ
朽ちた半顔を覗かせ
青銅の肌もあらわな
魔女たちの群
夜の空を支配する者

螢光物質を流し込んだように
脂の河が発情する
耳を澄ませば
地平線の向こうから
はじけちるような呪文が……

大理石の ふつふつ
あぶくの低い歌声は
夜の変貌をかけめぐり
魔女の裸体を楽しむと
名づけうべくもない涸渇へと
向かっていく

夜・とばり・遮断幕・洪水・まえぶれ

 闇を充たしている光のものが喰われていく
 喰いつくすそれらが光のものにとってかわる

白い棺の女たちは乱舞する
魔の果実は結実する
熟れきった魔女が落下する
冷えた大地に
ことさらの死を命ずるもののごとく
その 猥雑な姿態のまま

夜空をめがけて乱反射する
萎れきった脂の河が
ふたたび世紀をとりもどす
銀の釘をはじきとばし
棺の館が開かれる
死のものはよみがえり
死のままに
生あるものを支配する

ふりそそぐ
無限にふりそそぐ魔の呪文が
光となってふりそそぐ
世紀から遮断されたその夜のうちに
魔の洪水となってほとばしる

満月をくわえこんで
脹れあがった妖しい色の女たちが
無造作におたがいの内部へと溶けはじめる
星々は 平穏な光のもとに還りはするが
魅入られ 憑かれたまま
ちぐはぐに交錯する

交わった自然物のぬけがらの自然!

周到なる計画のもと
夜の空を支配する
白き腕もたおやかな
魔女が翔く
暁闇の
地平線すれすれの灼熱こそ
真実の獲物
ひくひくひきつる咽喉の奥に
残忍な呻きをたたみこみ
血のような眼光をたたえて
魔女の翔く



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