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詩集 「strand における魔の……」

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女陰

つつきでる顎
その落下
ささらさら 月光の波紋
なにごともなく水の朝が這い出てくる
ぷるっ 蛙の背の淫らな飛沫
翔破するものたちは
魔への階梯を裁断し
遠く 静脈の凪に……

ほほろほろ
剥がれつづける虹
金色に灼けた空がこわれて
ははぐくむ虫 星 不死
月という屍が
声あげる

きらめく夢の尻
小宇宙の謎を呑みほすもの
ほほとばしる腐敗
ききりさかれる谷間
くくらくら 青い動悸に
早朝は消化されて
魔の食道こそは
人民の涙を醗酵させる
地下室の悪意

じじくじく蝕まれた太陽
垂れこめる霧の膿
紫色の液体があふあふあふ……
ひとがたの岩がぬらり
気圏のぱぱしぱし
影を屹立させて
いま 宇宙の全貌がしめつける
午後のしなやかな革紐が

よこしまの魔の
はりはりはり……
肥大する唇が
地下に封ぜられた下肢を
ふたたび漿液にまみれさす
ガーネット色の歯の波
太陽を砕くと
いっきに地球はうらうらうら
魔の女陰の 豊饒の液に
裏がえる

黴のような
増殖のつぶつぶ
ごごの襞は
剥がれつつ増殖する
みみにくい裂け目をあらわし
ごごの欲望は
どどくどく 初潮の血にまみれ
硬直硬直
魔の呻き
獰猛な暗黒の淵をつきぬける

午後は
ああらわな夢に
その堂宇を追われ
ししじまという狂気 改宗 陋屋
屹立する鋼鉄の首が
一瞬の陶酔とともに
狩り獲られる



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