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詩集 「strand における魔の……」 |
忍び笑う魔夜のふかい残響くらい奥深さから 霜のはなばしらが うすく灼けついて 冷気をさそう 夢魔の けだるいめざめ たちのぼる細い光 腺病質の地平線に くの字にまじわる おぼろな太陽 その 影法師を涜して 一番鶏が啼く 呪われたものの声 森のけたたましい祭が 時の枝を渡っていく 磨硝子のように 雲がひとすじ流れていくと 平静をよそおった風が 純白に結晶する悪意をそそぐ 糊で貼られたように 宙ぶらりの朝が くっきり停止している いつのまに侵入していたのか 忍び笑いの魔は 光を日の出のまま 硬直させている 失神しつづける樹木や草 翅を凍りつかせた虫は とじこめられた腺という腺をしめなおし 魔の環境に順応しようとする だが 地を揺るがすような ひくく忍び笑う魔は なおも 朝の捕縛繩をゆるめない 均衡と静寂と 微動だにせぬ反復する呪い その深いけがれ ときどき ぴくりと うちかえす波のような 生命の停止が生まれるが すべてが異様なガスになり こもりつづける 忍び笑いの魔が呑みほしたとき 夜は 型通りの手続きで眠る 土の起伏 山脈と湖 処刑の丘や底なしの沼 永遠に耀う大河が 夜の痕跡を蔽いかくす 痙攣的に 一匹の野ウサギが躍りでる 電光に打たれたサイクル! 忍び笑う魔は その小動物を手にかけると すばやく粉雪を気化させる 血のりと血しぶき 朝を弔う跳躍! 幕は墜落する |
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