戻る
previous
次ページへ
next
閉じる
close
紙田彰の世界 目次へ
index
naoe-yaへ
naoe-ya

詩集 「strand における魔の……」

目次ウィンドウを作ります

家具など調度品の 装寝具
まんべんなく 霜の降り
バイスィクル
その樹海に 逆さ吊りのピエロ
なべてのものものが混淆し
へだたるものの距離が密接
重層の海は夜の刷毛に舐られ
白銀金箔の繊細な飛沫が
瞬間の内部を伸びる
紙・布・毛毬・あ・あ・泡
建物という柔らかさに
ふんわりおおわれ
眼の塔は
傾いだまま破裂する

鏡の迷路の早熟な心理
テールだ テールランプの
生意気な所有者
密室に違いない夜だが
降りつづけるものものがある

棘の裏 棘の表のほっそりした空洞
すつぽりおさまった蟹の
こぼれ落ちた動悸よ
聳え立つ山々は矩形
棘は広がりはじめ
透明な尖を結ぶ

どこからともなくというタロットの
褐色に古りた
吹雪の先史時代
棘の尻からもれる
雲の叢
重なる幻影
無愛想な水晶の根底に
ああ 燦然たる虹
その脚部が耀きわたる
(オートバイの風切音
 裂けるホイッスル
 咽喉仏の森 森)
から
女の長い腕が ひゅうるるる

〈静脈ガラスを溶かして〉
汚れた手術台に横たわる嬰児を
ぐしゃりと紐でくくり
〈この インチキの夜!〉
狐のような赤い顎を白衣で防護し
黄色い歯のぞかせ
女の長い腕が注ぐのは
おお 母のものなる月経の

獅子の吼える甲板には龍巻
垂乳マストに黒白リボン
機関室における太陽暦の故障
船体を支える十二の枠組みは跡形もない
それでも 上下左右前後方を見ると
鮫の牙の交錯 眼球の性交が
サザンクロスを造形している
     船型の家屋 は壁を隔てた空虚に まんざらでもないふうに怒号を送る
聖霊どもはどこに逝くのか
思考の滑降という単純さをよそに
燭台が運ばれ
食器 砂時計
唇のスープとか
星の刺青
祈りとか
ごたごたがやがや
主催者抜きのディナーが
血の雨だ
翼を広げて地底に閉じ込められるのは
誰か

尖端
飢えた魚
とりわけ 背中から尾へと開いた
ウラウオ シリウオ
ザリガニの礼拝
油断をすると 痛っ!
坂を転がり
首 首 首
疼く海
声の柱
ぬけるような青さで
背骨を貫通

館は
強靱な一対の鋼
どろどろの炎を
その痴呆を
弾頭部に装填すると
ものものの空隙にのめりこみ
突き刺さる 突き刺さる
神話の
やわらかな
やわらかな




戻る
previous
次ページへ
next
閉じる
close
紙田彰の世界 目次へ
index
naoe-yaへ
naoe-ya