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詩集 「strand における魔の……」

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宛名の魔(名宛ての魔)

宛名が
(背筋を ぞっと)
指先から離れ
(指先から離れる指の)
かつて見たこともない星座が
(通勤ラッシュ・非常用コック・滾るpussy)
ぽつねんとして
(火を吹く果実の)
果実の 素晴らしい棘が
剥き出し(の)に 街路を(突き抜け)貫通する
(眩く垂れつづける白昼)
午後
そいつ(土色の眼)は広告依頼主(が)として
(列車に対面している)
列車に対面しているではないか
(                            )
死体の足裏
舐める(舐め回る)
草色の毛を(毛叢を)灼き尽くすと
(白骨のように枯れた波しぶきが)
枯れた波のなみだ
桃色の貝柱を開いていく
(叩きつけられる桃色の貝柱)
(南半球の女たち)
南国の女の
乾いた頬
(吊られる)ぶら下がる
天然の首だ 頭だ 爪先だ
(足腰のこしかた まといつく冬)
冬が這う(這いつくばう人民)
禿山の頂きの黒い銃口は(が)
雑種犬の赤い眼にとらえられ
(とらわれ)
(スピーディに)(見捨てられる)
急速に見捨てられる景色
呼鈴が
(蒸気の)湯煙のような
とらえどころのないぬくもり
(尖った林)
林の中から(林を)歩いてくる
(歩きつづけ)
(茎のない)
茎のない(毛根)根だけの生き物が
養魚池の水面に
映しだす 灰色の(被膜)屍(空色)
渓谷には
淫らな(淫らな)(緑の河川)
緑の河川
(                            )
だが(だが)
(宛名の)
宛名が記す住所録の裏側に(に)は
(いきいきと)
生き写しの反転活字の
(反転活字を)(ブリンクする)
(貪り啖う 小動物が)
小動物が
(埋め込まれては)
埋め込まれているではないか



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