ハワイ←→東京通信記録06





メモ 84489番
From: a.kamita
Date: Mon, 1 May 89 19:32:14 JST
To: ****
Subject: ハワイからです 緑字


垂直に重なる皺 横殴りの火山活動 海に飛び込む崖

山の高さで割れる波 崩れる冠の天辺に跳ねる若者

肥つた黒人の遠い目 波の向かうに波 掌のビールが揺れる


数十のヨットが出現する日曜日 教会のステンドグラスの群青が覗ける

ジェリーフイッシュが刺すのは文明の白い肌

ロコボーイの闘志とは南国の楽天にあるのではない


****さんへ

 昨日は、なんだかぼんやりとしていてMIXにアクセスしたのですが、書き込まずに寝てしまいました。
 ノースショアから東に進み、南下するというドライブから帰った後で、結構な距離を散歩などして疲れていたのかも知れません。
 今日は、ワイキキのビーチでただただ日光浴と、夜に気の利いたレストランでシーフードという、毒にも薬にもならない一日を過ごしました。
 しかし、リゾートなのですから、こうして、ただの休養をすべきなのかも知れません。
 あまり欲を出して、経験の安物買いをしてもしようがないのかな。
 そろそろ日本人の団体客がどっと押し寄せてきました。
 いろいろいいたいこともあるのですが、それがそもそもありきたりのことなので、やはりここは黙っておくのが賢明でしょうか。
 そういえば、昼飯にビーチでピザという娘の要望でテイクアウトのラージサイズのピザを買いましたが、その店の人がナットストレイトで、まあ、年の頃は30ちょっと前で、彼らにしてはおばんなのですが、肥った彼女は日本の中年のそういう連中と比較すると、仕種などが演技としてオーバーなほど女性的で(日本では根っから女性的であるという演技をする)、「真夜中のカウボーイ」のわざとらしいオカマの演技というものを思いださせました。あれは、ああいったものに関しても、考え方というか、違うのですね、文化が。
 以前に、同時通訳の世界で活躍しているある女性が、世界の中の日本人というようなテーマの中で、日本人が駄目だということはよく言われるが、そのような論議を繰り返しても駄目で、そこからどうするかということが問題なのだという発言を某TVでしていて、現場からの説得力のある意見というような感じがありましたが、あえてそのような形で普遍化することが、小生は反対に事態を曖昧にするのではないかと考えたことがあります。
 どういうことかというと、駄目だ駄目だと繰り返すことが、どこに返って来るのかということです。
 これは、自分のライフスタイルに確実に返って来ることで、それは、マッスとしての日本人とかなんとかよりも、非常に個人的なレベルで、いわば逃れられない場所での問題になるわけですね。
 やはり、国外で、日本人の駄目なところを自分で確かめて駄目だということが、とても大事なので、駄目なのは分かっているからそれを繰り返しても何も生まれないという言い方は、聞き手と同一のレベルを論議の中で一度設定するという、操作的な感じがするだけで、せっかくつかまえた自分の場所というものを、日本人という一般性に後戻りさせるというような気がしました。
 何も生まれないどころか、日本人というマッスを無視して個人の場所で迫られる感性、思考などは、それこそ単一民族という、世界的レベルからするなら畸型的な問題に迫る、重要かつ現代的な論議をさらに展開させるのではないかと考えたわけです。
 ただ、それを対外的に繰り返しても、受け手との関係では反感しか生まれません。
 これは、なぜかというと、経験を反芻することだからなのです。反芻するということは、自分自身の確認とか覚悟の問題で、啓蒙的な問題ではないからなのでしょう。
 だからといって、啓蒙的な問題にしてしまうと、生の憤りや、嫌悪感、恥辱感(これは日本的とよく言われる感情)などが別のものにすり変わってしまう。
 ここが難しいところで、せっかくの体験が「日本人は」という言い方で、民族性などを離れて個人的に感じていたものが、おまえだって同じ日本人じゃないかという恫喝で後戻りさせられる。
 どうして、同じ日本人という考え方を認めなければならないのでしょう。
 マッスとしての行動様式を、少なくとも日本の土地を離れることによって退けることはできる、そのような点から見ているはずなのに、日本人批判をする日本人もいつのまにか今度はせっかく手にいれた個人の視座を捨ててしまう。このへんが、はっきりいってどうしようもないところなのです。
 建設的というような論議の中には常にこのようなまやかしがある。
 最近の若い人たちの考え方の中に、どうも、このような建設的な考え方をパスするようなものがあるのは、それこそ、小生は頼もしく思う次第なのです。
 また、わけのわからないことを思いつきで書きましたが、この旅も残すところ後一日、みなさまにはご迷惑をかけております。

 緑字斎




From: ****
Date: Tue, 2 May 89 00:08:56 JST
To: a.kamita
Subject:

 ほんとにもう帰国する日が近づいていますね。今晩のところは、短く、帰国をお待ちしておりますということで終わりにしておきましょう。
 旅の間ということで忙しいところ、お時間を拝借してしまいました。それではまた日本で。

 今日(1日)は東京は雨でした。でも3日ごろには晴れているでしょう。
 ****




Title:作品:ハワイ通信
Date :12:11am 5/ 4/89

メモ 85290番
From: a.kamita
Date: Wed, 3 May 89 00:59:22 JST
To: ****
Subject: 最後の通信です 緑字斎



テーブル上のオレンジ コナ 帰還する海は未明

ヨットだけの風景 波のグラデーションと水平線

闇の中にも波が重なる 原色の帆は眠りを知らず

ジョガーが起き出す椰子のつらなりにアロハ

灼けた肌を痛しと叫ぶ娘の旅日記

 緑字斎


 さあ、この旅も終わりです。
 のんびりと楽しみました。
 今度は、夏に大陸の方でドライブ旅行を考えていますが、どうなることやら。
 とにかく、一足先に健康な夏を過ごした次第です。
 ****さんもおつきあい、ご苦労さまでした。

 緑字斎




Date : 5:06pm 5/ 3/89 From: pcs00372 (直江屋緑字斎)

 ただいま。
 いま自宅に帰りつきました。
 のんびりしてきたので、あまり疲れてはおりません。
 日には焼けましたがね。
 ****さんの開いてくれたノートを読みました。
 東京でこれを読むというのは、なかなか面白いものです。

 今朝、帰り際にメールを一本送りましたが、****さんのほうから転載があるでしょうから、帰国ののメッセージはこちらに書き込みました。
 とりあえず、ご挨拶まで。
 緑字斎




Date :12:17am 5/ 4/89
 おかえりなさい。
 今日も東京は雷でしたね〜。
 永田町の騒乱に天の怒りか(^_^)
 ****


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