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七色分割
  ――夜のまっさおな変貌をとおって


ばらふり
蒼白へかすめよ地平線
いみ 柴れ骨からむ枯れた下肢
淫祀邪道を地下通路に吹かれて
宇宙を停止 はやばや咲かれて
鼠にアン鼠のふりつづく 霧の墓地
無色の花ふり
花のみの奇怪ふる

そらがけ
夙のつるばらからみをちかちかされよ夢
凍りつける世界を嵌まれる鏡の
ゆらめく底びかりを胡桃占い
田螺つかれ ラガーの戦慄
湊をさみだれる風景や
日時計に軌道する奇瑞や 船出と

忌の日る
ばらふり花弁にかさめよ鏡面
蠕動の巫祝る悲壮に昇りつめ
乱光する黄変に人民前史
ねえ 鎌る灰青と黒雨 風を飛乱
狂われよ死界のいきりたつ現在 いずこ
複合のフェニックスよ朝日の死のように
かみそりと連打する光
立体感性なる被包囲の光の光とともに
飛翔される頭脳を割れて
盲を首ひとつに暗転される

朔日たつ
列島に命数せよ
エモーショナルの絢爛を ほう
反射の 直会 なおらい を地理欲情され
鷺へと鉦打てる
緋の 節をひえこんでゆく死体“ん”
偏光曳きの刻まるジャズのほろみ
御幣 みてぐら にふるわれ また
いつか悪意に口づける

忌籠れ
さる の衝撃波さえ肌に濡れ
かりそまる薄空を竿立てて
螻蚶の花 透いたみどりをしたたれて
みちぐらる漆黒に石棺宇宙を抱かれて
吊れる 首ひとつ 浮き流れ
日常をレンズかさめて不可視の可視へ
姿容される無限を浮けよ

始源する 火祭れ
黝みの乳首吸わる闇の児
火芯に吸わる屍臭か
ゆらめきを視えよ 尸童 ペルソナ
また 反世界する孤島
吹きあげの花びらの舌よ
よみ 刺せよ 死の火翳
臨月 うみづき る燦々たるエロティク
ばらふり ばらふり

榊架けて
筒粥る世界を
野ざらせる虹オー
ロラ群 泥鰌を宿れて
雨をふれる意志に鏃れよ
北極星を墜とせる氷河期さえ
を目まいさせて 逆回転悲壮体
分割の火
分割のかがみ
われつづく虹
われわれの死念……
分割のカンバスを
彩れるか  時性 とき にもまして

ひかりものでどろどろの情脈をきる
闇吐きの蝨
ひかりものでどろどろ――


(c)1974, Akira Kamita

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