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真夜
パートAからBに至る
烏の 熱い羽声
啼く河から 墜ちる空
破れる炎の 厖大な零
舌どり 曲がる指
昂る星の岐れを 染めあげ
透明な
浮標
に映す 溶ける軟骨
淫らな春の 凍りつく瞳
うすい地底に 貼りつく
しなやかな翳を 光茫に
渡し 夜の格子に
枯れ玉の波 たそがれて
地平線に越える 毒物投与
百億の首 底なし
百億の火柱 天果つ
塞じられる 漆黒の平原
小動物よ
屍
て 光を吸う
ふかい霧の彼方 鎖・鎖・・
底びえの 旋律
あつい気流に 点滅の
花の奇怪な命を垂れる 曳舟から
吊り橋―― 疾駆!
烏の 濃密な風
寂寥な夜翔び 眩暈の河
畑には焦げる砂 隕石割れて
裂ける眼孔 白濁の時刻
宵星の紫斑が 潜り込め
ふりつけの涸れ渓谷に 我執こめて
不文律なく 直立する
ふりこめの歯型に 薄皮一枚
戦慄の荒海 夢こごり 携えて
炎
灸の跡 石膏漬け
崩れる
炎
垂れ 自然生の
跳ね橋を吠えて 夜
首の繋げ首にねんごろに 爛れる
朝駈けの襞 頭脳を舐れ
狡猾の液体 流動の
夕暮れ
河づたいの影
越境するのは罌粟の実流し
蛇の舌を持つ悪漢
天浪星
の狂犬の声
睡りの薔薇をかきわけ歯型が撒かれる幻の野
白
の 放心
植物群に する少年
告別の唄われ
赤毛
の陰毛に
蒼い真空の脚ひきずる男色の冥王に澄みつく
烏の啼く河へ
墜ち空曲がれ
パートCからDの前半部に至る
同 ば
時進行の春吹きぬけ く
さ つ
らに夜の長い廻廊を辿り へ
お 中 く
お!死のメロディは濡れた背 ゆ
怕 て る
れる蜃気楼の忍び笑いをさみだれ が
憎 さ 憶
悪の持ち数の疼きそれから弔歌がぶら 記
草 の
色の貌が吐き出してしまう白樺林の出来事
蜻
蛉の渚に
死体の注ぐ
防砂林
る
緋 が
の波が山頂にまで拡 る
暗 れ
黒の卒塔婆のかぼそく垂
網 て が
膜の迷路に断色のキイ落とし 情 帳
逆 欲 話
流の海底火山から水絵具のように 電
配 る
達していたのは裸体を小刻みに命名す
泡 る
の孕む鯨の影が水平線を弓なりに支えてい
百
億の首よ 烏の
閉ざされた羽声の
翔せこんでゆく
闇の空模様
パートDの後半部から二十行の空白越えて
断末の 剥げる音
空に 一文字の掻き跡が
睡眠
の 海崩れて
烏が 銜えるほそい光束の
ふれつづく 鏡の繊維に
畑から 撃ち墜とす
炎の 首・首・・
くらみ
糊状の 気体が
うすい骨盤に 汁すすり
真夜の
案内状
を
火焙る
眼の 岐れ際
不安な 幻聴の
化粧を
陰画
のほそ襞に
影映し
硬い 死臭の
粉肉に 混れ込ませて
撒らまけよ 夜星の
閃く母音
漂白部におけるテーマ
ことば 孕む
孕む ことば
日暮れて 静まる暗黒の
火のかしずく 銀河わたり
群をなす 真夜 の烏の
たかい劈きに よじれる繊維
影の中の影
空の中の闇
河を孕む音無しの
ひえた眼の唄が
煙る ことばの
はらまれの 真夜 焦がす
空白の 弔い合戦
ことば 葬草
ことば 空わたる螺条
眼底に唯一の空洞つづく 死体
(c)1974,
Akira Kamita