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銅鑼が鳴る
メルポメネー
ああ 秋の深い湖
裸女の像が永遠を見つめる眼で
命を光らせている
また季節風が吹く
甲板に出て
貝殻でできたパイプを拾う
ここも去らねばならぬ
みちのくの旅は終りぬ
田沢湖の畔に
杉の木立が高い
収穫期の田園よ
恋に破れる夢よ
涙を流すものは罪深きものなり
乳頭山が湖面に漂う
無数のボートと
一箇の遊覧船
水底に沈んだ恋人よ哀れなり
雲の切れ切れに
センチメンタルが流れてゆく
カラスも冷えてゆく
青函連絡船は外洋にある
カムチャツカ半島よ、シベリアよ
いま航路は凍っているか
垂直なる託宣板をモーセの金かくしという