緑字生ズ 020 (銅鑼が鳴る)

20

銅鑼が鳴る

メルポメネー
ああ 秋の深い湖
裸女の像が永遠を見つめる眼で
命を光らせている
また季節風が吹く

甲板に出て
貝殻でできたパイプを拾う
ここも去らねばならぬ
みちのくの旅は終りぬ

田沢湖の畔に
杉の木立が高い
収穫期の田園よ
恋に破れる夢よ
涙を流すものは罪深きものなり

乳頭山が湖面に漂う
無数のボートと
一箇の遊覧船
水底に沈んだ恋人よ哀れなり
雲の切れ切れに
センチメンタルが流れてゆく
カラスも冷えてゆく

青函連絡船は外洋にある
カムチャツカ半島よ、シベリアよ
いま航路は凍っているか

垂直なる託宣板をモーセの金かくしという