そこで、母となるか

見たこともなかった
その場所の してみること

ふるい街並みの おくの光の中
母親の亡霊が、彼女の夢魔が

あるいは旧市街の 路地
という路地のうらうら
石塀にえぐられた 穴 鎖された
そのずっと奥 向こうに

コピー写真を撒布した かの
いたるところに
夢の奥ふかく くらいところにも
あらわれてくる

これはなんのあや まちなのか
ただの不幸せなのか しわ しわではない
老人となって ここ

わからないという逃避のふたしかな
わからないという頭皮のわからなさ

そんなこともない ただの耽溺
ただもう進めない よわい よわい

人生のデッドエンドは
すでに過ぎ去って 過ぎ去って
いるとはかぎらない

けれども ははわはは
笑いごとではない 母の夢の日
けれども はてもさてなも
悪口を言い立てても ははわはは
命日というわけでもないけれど

古城の街は 門は
崩れかけた赤壁で囲まれているが
防御されつづけるには
齢をかさねすぎて

歴史 轢死 溺死
ふるくもあたらしくも 国家の石畳も
家族の大黒柱も 系統樹も
雨のしずくの中の ものものの
黒光りするに任せている
はかなさよ そのの

洛陽金谷園の石壁

洛陽金谷園の石壁