緑字生ズ 083 (尖った強迫観念)

83

尖った強迫観念
down townのとあるバーで
手を洗う酔払いのニグロ
カウンターの金が減っていくので
氷を噛み砕いた

風の噂に
黒い髪の女が裸で失跡したという
あの、独立家屋にいた女
庭を掘り起こすと
Bakuninの著作と嬰児の小骨

目の覚めたときにする思い違い
今年もまた暑中見舞が来た
platanusの一つの枝に
白い首がぶら下がる

夏が過ぎ、また同じ夏がめぐる
けれども、宿命というよりは永遠
心が破れるというよりは
酔いつぶれていた

――また黙って旅に出ている
人間をさらに進化させて
翅の、謎めいた
ふん、
夜だ

友人たちは
人間の中にはいないとも思えてくる
意志を支えるものは
反世界的な無為と
永遠に加速する死だと
また旅に出て考えている

一文字に収束する烈風
マルセラという名の地の女神よ
神の素因に抱かれて
Los Angelesでは
人々が狂いはじめていた